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慰謝料請求の基礎知識

ドラマや漫画で「慰謝料請求」という言葉をよく耳や目にするかと思いますが、これはどのような意味なのでしょうか。
法的性質や基礎知識等についてわかりやすく解説していきたいと思います。

制裁という性質

逮捕された男性

殴られて怪我を負った場合は暴行罪傷害罪
物を盗まれてしまった場合は窃盗罪

といったように、日本では様々な罰則が設けられています。
それでは、浮気・不倫をするのは罪ではないのでしょうか。

結論から申し上げますと、日本では浮気に対する「刑罰(懲役や罰金など)」が無いため、罰を与えたい場合は民事上の慰謝料請求しかありません。
つまり、慰謝料は単に精神的な苦痛に対する謝罪だけではなく、制裁としての性質も持っていると言えるのです。

民法が根拠となる
不法行為の被害に遭った男性

何かしらの行為によって権利や利益が侵害されてしまった場合、当然ですが被害者は負った損害を加害者に対して請求することが可能です。
これを「不法行為に伴う損害賠償請求」といい、例えば交通事故で怪我を負わされた等で身体的ダメージを負った場合はもちろん、無断で画像や映像をインターネットにアップされてしまったなどの精神的苦痛も慰謝料の対象となります。

浮気は、交通事故とは異なり身体的なダメージこそ負いませんが、精神的な苦痛を伴ったことや婚姻を継続することが困難になるほどの重大な違反として慰謝料を請求することができます。

損害賠償の要件と注意点まとめ

慰謝料請求について考える男性

まずは慰謝料請求をするための要件からおさらいしていきましょう。

慰謝料請求の要件まとめ

相手に故意または過失があること
実際に損害が発生していること
保護されるべき権利があること
権利の侵害行為があること
因果関係があること

損害賠償を請求するには上記全てに該当しなければなりません。
詳細についてはこちらのページでご説明しておりますので当記事では割愛し、注意点や問題点についてのみ解説していきたいと思います。

注意点その1~立証責任について

裁判になった場合、誰がどのように立証しなければならないのでしょうか。
結論を申し上げますと、不法行為に伴う損害賠償請求の立証責任は債権者側(被害者)にあるとされています。(慰謝料請求では被害者が債権者、加害者が債務者に当たります。)

つまり「被告人の行為によって損害を負ったこと」「行為によって生じた損害の度合い」などの証明は被害者側が主張・立証していかねばなりません。
もちろんこれはあくまで裁判になった場合の話ですが、証拠が無いと分かれば裁判に持ち込まれる恐れもありますので、やはり証拠は予め用意しておいた方が良いでしょう。
証拠をしっかりと提示できれば交渉を優位に進めることも可能です。

注意点その2~加害者側の反論

夫婦関係があるからこそ要件の1つである“保護されるべき権利”が発生するのであり、既に夫婦として機能していなかった場合は当該要件を満たさないことになってしまいます。

そのため、慰謝料請求や離婚裁判では相手方から「夫婦関係が既に破綻していた」という主張が多く用いられています。

では“夫婦関係が既に破綻していた状態”とはどのようなケースが該当するのでしょうか。
具体的には相手方からDVを受けていた・長期間別居状態にある・長期のセックスレスに陥っている等が挙げられ、このような事実があった場合は既に夫婦関係が破綻していたとみられる可能性があります。

注意点その3~「浮気相手」からの請求

浮気をされてしまった人(被害者)は、浮気をした配偶者とその相手方の計2人に慰謝料を請求することができます。
ここで注意したいのが、浮気相手も結婚していたケースです。

つまり、相手の配偶者から見るとあなたの夫や妻が“浮気相手”となりますので、逆に慰謝料を請求されてしまう可能性があります。
「もう離婚するから夫(妻)がどうなっても構わない」というのであれば特段問題はありませんが、再構築を目指す場合は“痛み分け”となってしまう格好です。
仮に両夫婦とも離婚せず再構築を選択した場合、互いの慰謝料請求権が相殺され、興信所・弁護士費用を丸々損してしまう可能性があります。

探偵事務所・弁護士事務所の費用は決して安くはありません。
制裁を加えたい・慰謝料を請求したい・離婚したい…など様々なご希望や思いがあるかとは思いますが、再構築を目指すのであればグッと堪えるのも一つの選択です。
「自身がどうしたいのか」という点について、まずはしっかりと考えてみることを強くお勧めいたします。