日本と世界の「不倫」の違いとは
「愛」は世界共通のものであり、結婚制度が無い国は存在しません。 一方で、浮気や不倫に対する罰則や制裁に関しては国ごとに差異が見られます。 法律的な観点からみた「日本と世界の不倫の違い」についてまとめましたので、ご興味がある方は是非チェックしてみてください。
日本と世界の違い~刑罰について
「不倫をしたパートナーを許す」
簡単なことのようで、非常に難しいことですよね。
今もなお不倫に対する刑罰が存在する国もあり、罪の意識は各国で異なります。
日本に於ける刑罰
現在日本では浮気に対する刑罰はありませんが、戦前の旧刑法では「姦通罪」と呼ばれる刑罰が存在していました。
(旧刑法第353条)
有夫ノ婦姦通シタル者ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ處ス其相姦スル者亦同シ
此條ノ罪ハ本夫ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス但本夫先ニ姦通ヲ縱容シタル者ハ告訴ノ效ナシ
(旧刑法第183条)
有夫ノ婦姦通シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ處ス其相姦シタル者亦同シ
前項ノ罪ハ本夫ノ告訴ヲ待テ之ヲ論ス但本夫姦通ヲ縱容シタルトキハ告訴ノ效ナシ
つまり、夫のいる女性と関係をもった男女は懲役刑が課せられる可能性もあったのです。
「6か月以上2年以下の重禁錮」とありますので、非常に重い刑だということが分かります。
第二次世界大戦後、新しい憲法(日本国憲法)で男女平等が明文化されたことで、姦通罪は廃止されました。
刑法に抵触する国も多数
まず、法治国家の代表格であるアメリカですが、同国は今もなお21の州に於いて姦通を犯罪として定めています。
日本の近隣諸国では韓国が姦通罪を刑法にて定めておりましたが、2015年2月の違憲判決を受け現在では廃止し、さらに台湾も同様に2020年5月の違憲の判断(憲法解釈)を受け廃止されることとなりました。
なお、イスラム圏やアフリカ諸国では今もなお不倫は重罪であるという考えが根強く、最悪死刑となる場合もあります。
しかし、レイプ被害に遭った女性をさらに姦通罪で罰するなどの明らかな女性軽視の運用も目立ち、世界全体での意識改革が必要と言えます。
日本と世界の違い~慰謝料について
不倫に伴う「慰謝料の請求権」も各国によって異なります。
知っておいて役立つ…という可能性は薄いですが、不倫相手が外国人であった場合には役立つかもしれません。
日本と世界の慰謝料に対する意識の違い・取り扱いについて確認してみましょう。
不倫相手には請求できない
繰り返しお伝えしてきた通り、日本では不法行為の成立要件を満たすことさえできれば不倫相手にも慰謝料を請求することが可能です。
ごく当たり前の権利と思われがちですが、世界的には珍しい請求権となっています。(例えば、アメリカ・イギリス・ドイツ等では浮気相手に対しての慰謝料請求は認められていません。)
そのため、不倫相手が外国人であった場合、そもそも自分が慰謝料請求をされると夢にも思っていないケースが多いそうです。
もちろん、日本国内で行われた不貞行為については処罰の対象であり、不法行為の要件を満たせれば慰謝料を請求することができます。
アジア諸国は慰謝料が低い又は無し
日本とも馴染みが深い「韓国」や「中国」ですが、不倫そのものに対する慰謝料は存在せず、婚姻期間中に負った精神的な苦痛に対する慰謝料という形に留まっています。
また、タイも同様に浮気や不倫に対する損害賠償請求権は存在していません。
これは「浮気は当事者間の問題であり、法律によって介入すべきではない」という考えに基づいています。
しかし、浮気は男性側が加害者となるケースが圧倒的に多く、慰謝料請求が認められない背景には男尊女卑が根強く残っているのも事実です。
日本は不倫大国?
冒頭でもお伝えした通り、日本では不倫や浮気に対する刑罰はありません。
しかしながら、これらの行為がパートナーを深く傷つけ、家庭を壊してしまう可能性があるのは紛れもない事実です。
刑罰が無いからといって好き放題するのではなく「浮気をされたら相手がどう思うか」について、まずはしっかりと考えることが大切ではないかと個人的には思います。
なお、日本では刑罰こそありませんが、慰謝料請求に関しては幅広い選択が可能です。
例えば、不倫の相手に対してのみ慰謝料を請求すること・離婚を伴わない慰謝料請求等については認めていない国も多数存在しますが、日本では認められています。
何らかの制裁を加えないと気が済まない!と思うのは至極全うな心情であり、被害者に認められた正当な権利です。
罰則の観点から見ると、日本は「不倫のしやすい国」と言わざるを得ませんが、なんらかの罰を与えることも時には必要なのではないでしょうか。
不倫・浮気は世界中で起こりうる男女トラブルですが、死刑となる国に比べれば日本はかなり緩い方と言えます。
なお、慰謝料請求に関しては「しやすい」と言えますので、金銭的なリスクは高いかもしれませんね。
しかしながら、罰則の有無に拘わらず、パートナーを傷つける・家庭を壊す可能性があることをしっかりと理解することが大切です。