財産分与について
慰謝料をたくさんもらったのに財産分与でマイナスに。
信じられないかもしれませんが、このようなケースは十分に起こり得ます。
財産分与がどのようなものなのか、制度の概要について解説いたします。
結婚の効果とは
結婚とは、簡単に言うと「男女が夫婦になること」です。
夫婦になるというのはどういうことなのかと申しますと、法律上「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する(民法750条)」「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない(民法752条)」といった効果が生まれます。
つまり、結婚によって夫の責任は妻の責任・妻の責任は夫の責任となるということですね。
また、互いに助け合い生きていかねばなりませんので、さらに以下のような法的効果も発生します。
婚姻期間中の費用負担
まず、共同生活によって生じる費用は夫婦が互いに協力し合って分担しなければなりません。(民法760条・婚姻費用の分担)
また、夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負います。(民法761条・日常家事に関する債務の連帯責任)
例えば、家で使用する日用品や食品を購入した際の費用については、夫婦で協力し合って支払わねばならないということですね。
「貴方が買ったのだから貴方のお小遣いで払いなさい!」というのは、趣味に使ったお金であれば通用しますが、婚姻費用や日常家事債務においては通用しません。
相続人となる
相続とは、亡くなった方が生前有していた財産を受け継ぐことをいいます。
財産を引き継ぐ人のことを「相続人」といい、亡くなった方の配偶者や子・親・兄弟姉妹等が法律上の相続人(法定相続人)となります。
家族構成によって相続人は異なります(例えば、子がいた場合は親や兄弟姉妹は相続人になりません)が、配偶者は常に法定相続人となる上、相続分が最も多いです。
ただし、これはあくまでも法律で定められた「原則」であり、遺言書で相続分が指定されていた場合等、必ずしも相続分が発生するとは限りません。
婚姻中に取得した財産が対象
さて、いよいよ本題の財産分与について確認していきましょう。
「財産分与」という概念があるのは、民法に以下の通り記されているためです。
民法762条(夫婦間における財産の帰属)
夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする。
夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
つまり、
1.婚姻する前の財産はその人の財産
2.婚姻期間中でも自分のお金で買った物もその人の財産
3.どちらか分からない場合は共有の財産
ということになり、夫婦であっても互いに財産を持てる又は管理できる(夫婦別産制)と解釈できます。
ここで問題となるのが、いずれか一方が働きに出ているケースです。
“婚姻中自己の名で得た財産”に給与を含めてしまうと、専業主婦又は専業主夫の方は自身の財産を築くことが出来ず夫婦間に大きな格差が生じてしまいます。
そのため、特段の事情のない限りは双方の寄与を平等と推定して清算する方法(2分の1ルール)を採り、いずれか一方が著しく不利な立場にならないようバランスを保っています。
「俺が稼いだ金だぞ!」と偉そうにする旦那様も多いかもしれませんが、奥様がしっかりと家事をしてくれているからこそ働けているという事を忘れてはならないのです。
生活費も請求できる
冒頭でもお伝えしましたが、婚姻期間中に発生した生活を維持するために必要な支出(家事費)は、夫婦が折半して負担しなければなりません。
仮に夫が会社に勤め妻が専業主婦を担う場合、当然ですが夫が生活費を入れなければ婚姻生活を維持することが出来ませんので、妻は夫から生活費を受け取る権利があります。
夫が生活費を入れず、妻が自分のパートのお給与・婚前に有していた財産等で生活費を賄っていた場合、その分の費用を請求することが可能です。
ご覧の通り、状況によっては慰謝料よりも財産分与額の方が高くなる可能性があります。
離婚を視野に入れている場合は、財産分与額がどのくらいになるのか事前に弁護士に相談しておくと良いでしょう。